クリスマストップ

 

~~露伴達のクリスマスパーティ!(1)~~
 【1】    


 ■1 パーティの開始

快晴東丘学園寮の中、それはどっしりと構えていた。
目の前に置かれたのは、1mほどある大きな白い巨塔。
智輝「ウェディングケーキじゃねえかっ!?」
この寮の生徒の1人、二階堂 智輝にかいどう ともきがケーキに対して突っ込みを入れていた。
べちょっと手の平が生クリームを直撃する。
愛「あーー、ちょっとトモっ! なに勝手に食べてるのよ、入刀もしてないのにー。最初に食べるのはあたしの仕事なのよ」
智輝「それが仕事なのかよっ」
それを見た、同期生でありながらにして有名怪盗ルパンの孫娘露伴 愛ろはん あいが不満を口にした。
活発そうなポニーテールを揺らし、両拳を腰に当て、ぷんすか怒った様子を見せた。
俺を見上げる明るい表情は、まだわずかに大人になりきれていない丸さを残し、可愛らしさを感じさせた。
こよみ「『入刀』と言うことはわたくしの出番ですね」
露伴の言葉を聞いて、嬉しそうに声を上げたのは、黒髪の落ち着いた様子を見せた女の子だった。
肌の色は陶器のように白く、目鼻立ちは小さめで、すっと尖った小顔、腰まで流れるような長髪、着物でありながらその着物を押し上げてやまない乳房。
袖の合わせ目には胸の谷間が佇んでいるであろう場所に、サラシが見え、隠されるエロスを醸し出していた。
石河五右衛門の血を引く和風少女、石河いしかわこよみ』さんである。
こよみさんは入刀という言葉に瞳をキラキラと輝かせ、今にも腰に提げた『名刀・斬鉄刀』を引き抜こうとしている。
俺はこよみさんの『乳頭』が非常に気になったりするが……そんなことを口にしようものなら、切り捨て御免も止むを得ないだろう。
智輝「いや、待ってっこよみさん。このケーキもしかしたら間違いかも知れないからっ!」
蘭「間違いなんだけど、間違いじゃないわよ。トモちゃん」
智輝「蘭さん……どういうこと?」
こよみさんと同じように落ち着いた雰囲気を持ちながら、年上の魅力を併せ持った女の子猫倉 蘭ねこくら らんに尋ねる。
名前で呼ぶ関係なのは、彼女が俺の恋人だったりするのではなく、親戚であることと2人の妹がいるからだ。
蘭さんはネコを模したデザインのヘッドドレスにバスト98のIカップの谷間がハッキリと見えるレオタードを着ていた。
よく膨らんだお尻も生唾モノの膨らみを見せているが、よくくびれたウェストにすら色香を感じた。
俺達と同じ年とは思えないほどだ。
蘭さんはよく手入れの行き届いた髪をなびかせ、ケーキを見上げる。

蘭

蘭「このケーキね、ウチのマスターに言って特別に作ってもらったケーキなのよ」
智輝「えっ!? あのツルツルマッチョがこれを作ったのっ!?」
俺の脳裏にグラサンをかけた険しい表情の男が思い浮かぶ。
身長は200cmに近く、肩幅も広くガッシリとしており、服の上からでもその隆々とした筋肉が分かるほどガタイがいい。
作る料理は猟銃で狩った動物を焚き火で丸焼き、というのが似合いそうな男が、女の子の憧れウェディングケーキを作っている姿を想像するのは難しい。
どうしても左官屋のように、パテを使って壁を修復するかのように、ケーキ作っている姿を想像してしまう。
蘭「叔父さんね、特別なケーキと勘違いしちゃったみたいなの。
  せっかくだからこれ、トモちゃんとの婚約ケーキにしちゃう?」
蘭さんは俺に身体をすり寄せ、太腿を絡ませながら、人差し指で頬を撫でて、そっと顔を寄せてくる。
智輝「ら、蘭さん……こんな人が見てる前で……」
桜「ちょっと、蘭姉さんっ! 結婚するのは私っ……じゃなくて、ただちょっと間違えて大きく作っちゃったただのケーキだけでしょ?」
智輝「ただ大きく作っただけじゃ、てっぺんに男女の砂糖菓子は付けないと思うぞ」
桜「うるさいうるさいっ! いいから、蘭姉さんから離れなさいっ!」
俺と蘭さんを引き裂いたのは、1人の少女だ。蘭さんと同じ衣装を着ている。
綺麗に切りそろえられた髪の毛と、まっすぐな瞳は、見ているものに真面目な印象を与えるだろう。
その真面目そうな外見はネコ耳バンドと露出の高いレオタードで可愛らしくもエロく飾られてる。
名前は猫倉 桜ねこくら さくら。猫倉家の次女だ。
顔を真っ赤にして、重い扉を開けるかのように俺達を左右に引き裂いた。
菫「桜ねぇ慌てすぎ。冗談に決まってるのに」
慌てる桜に楽しそうに声をかける、これまたネコの衣装がよく似合う少女。
猫倉家三女、猫倉 菫ねこくら すみれちゃん。
ショートカットの少し大人しめな印象を与える。
顔付きも身体付きも幼さを存分に残しており、若々しい肌が背徳的な魅力を醸し出していた。
桜「べ、別に慌ててなんかいないわよっ! ただ、その……もういいっ」
何か言い訳しようとあれこれ考えて、いい考えが思いつかなかったのか、桜は顔を真っ赤に染めてぷぃっとそっぽむいた。
智輝「……? なんだアイツ」
俺は勝手に怒り出した桜に疑問を浮かべながらも、ケーキに視線を戻す。
見上げてしまうほど大きなケーキを戦場の海坊主と呼ばれたあの全身リーサルウェポンが作ったとは思えなかった。
菫「こんなに大きなケーキだと、食べるのが今から楽しみー」
智輝「でも、あの大男が作ったケーキだろ? 中に変なモノ混ざってたり、お隣の国から取り寄せた恐るべき原材料を使ってたり
    するんじゃないか?」

菫「それは大丈夫だよ。ああ見えても叔父さんは大の甘党だから」
智輝「────!? ㈱㌢㌧㌢㌧㌍㌢$☆!」
俺は菫の言葉に絶句し、真っ白になった挙句、脳内思考が完全に停止していた。
ショックを受けて固まる俺の背後の扉がぎぃと音を立てた。
大夏「んん? 智輝なぁ~に、面白い顔芸してるの? 隠し芸の時間にはまだ早いよん?」
入ってきたのはツバ付きの帽子に、黒のジャケットという怪しい出で立ちの女の子だった。
左目が完全に隠れてしまうほど前髪が非常に長く、表情を隠しているように見える。
しかし、口元に浮かべた笑みと大きな瞳が、服装と対照的なまでに明るさを伝えて、魅力的に見せていた。
彼女の名は次本 大夏つぎもと おおか。露伴グループの怪盗の一人であり、超一流の腕を持つガンマン(ガンウーマン)でもある。
智輝「ん、ああ、ちょっとこのケーキを作った人を想像してたら、末恐ろしくなってな。ところで遅かったな。パーティの主催が遅れるなんて
    感心しないぜ」

本日は12月の記念日。
クリスマスパーティー。
大夏「ふふー。じつはコレを持ってきていたのだ♪」
次本の手にはいくつかのクラッカーが握られていた。
智輝「いいねぇ、パーティっぽくて」
俺は次本から渡されたクラッカーを他の人たちにも渡していく。
大夏「さあ、Let’s怪盗パーティの始まりだよん♪」
愛「それじゃ、みんな一斉に行くよー」
一同「「せーのっ! メリーックリスマーースッ!!」」

  <<パァッンッ>>

寮の食堂の中に破裂音と共にいくつもの火柱が湧き上がった。
桜「わわわっ、な、なにこのクラッカーッ!?」
こよみ「わぁ~~、綺麗な炎ですねぇ」
あり得ないほどの迫力、むしろ殺傷能力すらありそうな威力を見せるクラッカーに驚く一同。
智輝「だ、大丈夫なのか、これ!?」
大夏「にゃっはっはっ! 驚いた、驚いた? 次本大夏・特性の『弾丸クラッカー』☆」
智輝「驚く以前に怖いわっ!」
大夏「やっぱホンモノの火薬は違うわぁ……」
智輝「おいっ!」
腕を組んで、一人うんうんと頷く次本。
愛「やっほーーっ、これサイコーッ! もっと撃っちゃえー☆」
露伴は次本の弾丸クラッカーが気に入ったのか、次本が用意したクラッカーを再び手に取ると、天に向けて思いっきり紐を引っ張った。

  <バリイィイッンッ!!>
*まっくらだ*
露伴がヒモを引っ張った瞬間、部屋の中を暗闇が支配した。
愛「あれ……!? 当たったの? ごめん、ちょっと照明壊しちゃったみたい」
智輝「ちょっとマテェ!! ああ、チクショウ、
  暗闇だから突っ込みに行けないっ! くそおおおぉぉっ、くそおおぉおぉっ!!」
桜「そこまで悔しがらなくても……」
俺は暗闇の中、本気泣きして悔しがる。
菫「それ以前に、部屋の電気が一気に落ちたところに突っ込みを入れようよ」
寮の部屋の中にはいくつもの蛍光灯がある。それが一発のクラッカーで壊れるなんてあり得ない話である。
智輝「しまった!」
大夏「あ、それは散弾銃仕様だから」
暗闇の中からまたも明るい声が聞こえてくる。
智輝「お前はクラッカーに何を求めているんだーーっ! ってああ、また暗闇だから
   突っ込めないっ! くそおぉおおぉっ、くそぉぉおぉぉおおっ!!」

桜「だから二階堂君、悔しがり過ぎだって……」
蘭「でも、こんな暗闇の中じゃ、パーティなんてできないわ」
蘭さんの困った声が聞こえてくる。
愛「そうだねぇ。それじゃ、闇鍋パーティーに変更しようか?」
智輝「断固拒否するよっ! どうせ入れるんだろ、この巨大なケーキ!」
愛「チッ」
智輝「舌打ちするなぁーーっ! くっそおおぉぉ、この暗闇さえなければぁっ!」
俺が3度目の悔しがりを見せると、部屋の中をオレンジ色の淡い光が支配した。
智輝「んっこれは……?」
菫「『頭ピッカ中』君。暗闇の中、100万ボルトで光るネズミ型照明具だよ」
智輝「明るくするのに100万ボルト要らねぇだろっ! ああ、突っ込める♪」
俺は突っ込みの喜びを噛み締め、涙する。
桜「だから、そこまで感動することでもないでしょ……」
菫ちゃんの作った『頭ピッカ中』というネズミの形をした黄色い照明具が更に強い光を作り出すと、部屋の中は照明を付けているのと同じ明るさになる。
しかし、発光箇所は一箇所だけ。スポット状に広がる光は柔らかくも怪しい雰囲気を作っていた。
愛「うわあぁ綺麗☆ さっすが菫、普段はライバルで邪魔だって思っちゃうけど、今だけは見直してあげるわ」
菫「フッ……褒めても手は抜いてやらないぞ」
菫ちゃんは僅かに頬を染め、緩ませていた。
蘭「ありがとう、菫。これでようやくパーティが始められそうね」
蘭さんは少し安心したように大きな胸をなでおろした。
大夏「ふっ、何を隠そう、私は最初からコレを狙っていたのだ」
智輝「嘘つけっ」


 ■ 2 ケーキ入刀!

智輝「やれやれ……ようやくまともなパーティが始まりそうだな」
俺は目の前のまるでバベルの塔のようなケーキを見ながら溜め息を漏らす。
愛「それじゃあ、まずはケーキにローソクを立てて、ふーってやろう」
智輝「それは誕生日じゃないか」
愛「えーー、2010本くらい差して消そうと思ってたのにぃー」
智輝「ケーキが穴だらけになるわっ!」
ハリネズミのようになったケーキを想像して、露伴の意見を却下した。
桜「でも、ロウソクの火でライトアップされたケーキって幻想的でロマンチックよね……」
桜(こ、これを期に、ちょ、ちょっとでも、智輝といい雰囲気作らなくちゃっ……。そ、そうだ、せめて手をつなぐくらいしないとっ)
こよみ「風流ですね。まるで夏の怪談をやっているような雰囲気が出ますよね」
智輝「なにっ、この空気で怪談離してろうそく一本ずつ消していくの? それなんて和洋折衷!?」
ローソクの代わりに線香でも立てそうな感じだな。
蘭「でも、いいじゃない。せっかくロウソクも立ってるんだし、火をつけましょう。誰かマッチある?」
大夏「それなら私にお任せ」
次本は自信満々と手を上げた。
智輝「銃で火をつけるのはダメだからな」
大夏「…………」
次本の表情が凍りつく。
次の瞬間には、部屋の隅で膝を抱え込んで凹んでいた。
智輝「凹むなよ、そのくらいで!!」
大夏「だってさ、智輝が私の存在意義を150%も否定するからさ」
智輝「お前の存在意義、銃に偏り過ぎだろっ!」
智輝「分かった、分かったから。火をつけろよ、ただケーキに弾丸ぶち込むなよ?」
許可を出すと、次本の表情が見る見るうちに明るくなっていく。
菫「おおっ、頭ピッカ中も使っていないのに、あそこだけキラキラと明るくなっている!?」
桜「摩訶不思議な現象ね」
大夏「よぉーーしっ! やっるぞー☆」
次本は銃を構えると、早撃ちを開始する。
弾丸が短いロウソクの切っ先を通り抜けると、火が灯っていく。
ぢゅっと燃え上がるロウソクがオレンジ色の淡い光を作り上げ、煌々とウェディングケーキを照らし出す。
大夏「あ、てっぺんにもぶっといロウソクがあるじゃない。はっ」
次本は最後の一本にも火をつけた。

  <じじじじじじじじ……>

大夏「んんっ? なんか火の付き方がびみょーに違うような」
蘭「みんな、伏せてっ! それダイナマイトよっ!」
智輝「はっ!?」
なんか今、ケーキにデコレーションするものとしては、聞き覚えのない単語が?
菫「叔父さん、たまにシャレで爆発物をケーキに仕込んだりするの」
智輝「シャレになってねぇよっ!?」
導線の火が、チリチリと雷管に触れた瞬間、暗闇から白の世界が広がる。
智輝「おおっ、世界が山吹色に輝いている……」
衝撃音が鼓膜を強く震わせた瞬間、俺の身体は大きく吹き飛ばされたっ!
智輝「ギャーーーーーッ!!」



愛「お~~~い、トモー。生きてる~?」
露伴の声が聞こえてくる。
智輝「あ、ああ……なんとかな……」
俺は罠を避ける達人……あの爆発の中でも、その才能は遺憾なく発揮して、致命傷を避けていた。
……ったく、あのバトルマニアめ、物騒なモン突っ込みやがって。
今度会ったら時にゃ、てめぇのケツにダイナマイトぶちこんでやる。(怒)
智輝「あ、そうだケーキはっ!?」
あの爆発である。粉々に砕け散ったに違いない。
菫「あ、それは大丈夫みたい。ほら」
菫ちゃんがウェディングケーキが置いてあった場所を差すとそこには普通のホールケーキが置いてあった。
円型のスポンジに綺麗に生クリームが塗られた綺麗な土台。
その上には宝石箱を連想させるようにさくらんぼやブドウ、イチゴなどが敷き詰められて、光り輝いていた。
智輝「あの親父はどこまでケーキにこだわりがあるんだ……?」汗
というか、最初から今見えているケーキだけよこしてほしかった。
愛「わあぁーーっ♪ おいしそうっ! ねねね、早く食べよう食べようっ♪」
大夏「そうね──ってあれー? ナイフがこの辺にあったと思うんだけど」
キョロキョロと周りを見渡すが、銀色のナイフは見当たらない。
こよみ「では、わたくしの出番ですね」
まるで舞台のそでで出番を待っていたかのように、ずずぃとこよみさんが瞳を爛々らんらんと輝かせ前に出てくる。既に刀のツバに手が進んでいた。

こよみ
こよみ「石河流剣術最終奥義 ケーキ入刀!」

智輝「結婚式っ!?」
勇ましい言い方でも、やってることはただ切り分けているだけだった。
大夏「パートナーと息が合った素晴らしい一撃だったわ……これを繰り出されては、ケーキも生きてはいられないわね」
智輝「もともと生きてねぇよ」
こよみ「あらあら、またつまらないものを切ってしまいましたわ」
桜「それ、メインのケーキよ……」汗
市川の一言に桜は呆れたように突っ込みを入れていた。
智輝「そう言ってしまう体質なんだそうだ。突っ込んでやるな」
桜「二階堂君が突っ込み放棄するなんて、よっぽどなのね……」
桜(い、いまがチャンスよね。隣にいるんだし……)
桜が何か考えているようだが、ここは切り分けられたケーキをいただくことにしよう。
桜「あっ……」
智輝「んっ、どうした桜?」
桜「な、なんでもない……」
桜はすごく残念そうな表情を浮かべて、しょげていた。
智輝(変なヤツ)
桜から食卓に視線を戻すと、会場に客が1人増えていた。
しかも偉く場違いなヤツだ。
智輝「おい、なんでてめぇがここにいやがる」
俺は今にもケーキを口にしようとしている人物に蹴りを入れる。
乙女「ふおおおっ、な、何をする!?」
その人物は、2~3歩よろめいた後、こちらを振り向いて抗議の声をあげる。
智輝「それはこっちのセリフだ。なんでお前がここにいるんだ!?」
茶色いトレンチコートを着込み、ビシッとネクタイを締めた女を指差し、行為を問い詰める。

銭型

乙女「なぜここにいるだって? ふっ愚問だな。お前達が今日、ここに集まってパーティをするのは分かっていた」
智輝「この時期なら別に珍しいこともないだろ」
乙女「隠さずともアタシには分かる。パーティはカモフラージュ! 何か悪巧みをしているのだろう! だが、そんなことはさせんぞ、このOP学園おかっぴきがくえん怪盗取締課の銭型乙女が目を光らせているからな! ハーーハッハッハッハッ!」
大きな口を広げて、高笑いをして、パクッとケーキを口にした。
智輝「…………お前さ、自分の学園のヤツラに誘われなかったのか?」
乙女「ぐっ!?」
銭型は突然、涙ぐみ始める。
智輝(もしかして、図星だったのか?)
蘭「かわいそうに……」
智輝「悪い、言い過ぎた……」
乙女「く、苦しい……み、水ぅ……」
智輝「詰まってんじゃねーよ!」
乙女「んくんくんくっ……はあぁ……。露伴を追うのがアタシの最優先事項だからな……むぐむぐむぐ」
智輝「……」
食うな。
乙女「それに怪盗とデカは切ってもきれないもの。そうまるでパンとバター、否! ご飯と納豆のようなものだ!」
バンッと自信満々に言い切る。
智輝「ワケわかんねぇよ、その例えっ!」
愛「ご飯と納豆よりは、ご飯と食卓海苔なら分かるかな」
大夏「いやいや、ご飯とたまごでしょ」
こよみ「納豆と”からしお醤油”の関係なら分かりますね」
智輝「いや、納豆にからしは邪道だろう」
桜「玉子はどうかしら?」
菫「納豆は邪道。あれは悪魔の食べ物だ」
蘭「あらダメよ、菫。そんなこと言って好き嫌いしてるから、『胸』が大きくならないのよ」
菫「ぐっ」
菫ちゃんは蘭さんの言葉に顔をしかめる。
智輝「あれ? でも菫ちゃん納豆巻きは好きじゃないか」
菫「あれはあまりネバネバしてないから」
桜「だから玉子入れておくといいんだってば。それをノリで巻いて食べれば……」
乙女「お前ら、人の話の腰を折ったあげくアタシを無視して盛り上がるなーーっ!!」
あ、何故か銭型が切れた。
智輝「なんだよ。監視に来たなら目立たない場所で、アンパンと牛乳飲んでろよ」
張り込みの基本だろうが。
乙女「どうせ、ここにある食べ物も盗んできたものなんだろ?」
智輝「なんでこんなモノ盗むんだよ! つか、盗んできたモノっつぅなら、お前食ったらダメだろうがっ!」
乙女「食っているわけじゃない。被疑者を確保しているだけだっ☆」
どうしても居座るつもりらしい。
八重「お姉さまーっ、タッパーの調達に成功しましたー♪」
透明な容器を片手にやってくる少女。
八重「あ、二階堂さん、こんばんは。メリークリスマスです」
智輝「ああ、メリークリスマス」
銭型の妹分、『棚葉八重』(だったかな?)と、この日限定の挨拶を軽く交わす。
智輝「ところで、銭型さんよぉ? タッパーってどういうことでしょうかねぇ?」
ギロリと銭型を睨みつける。
乙女「エクレアはあるか?」
銭型は、口の周りにクリームをいっぱい付けつつ、俺の言葉を無視した。
智輝「聞けよっ! タッパーをどう使うつもりなんだ? 正直に吐いた方が身のためだぞ」
俺は菫ちゃんの100万ボルトネズミを乙女に向けて、自白を促す。
大夏「なんでトモちんの方が警察っぽいコトしてるの?」
次本に呆れられたような突っ込みをいただいた。
菫「トモにぃ、少しくらいいいよ。どうせ、余るから」
桜「そ、それよりも……二階堂君もお料理食べてよ」
ケーキにすっかり気を取られていたが、テーブルには他にも様々な料理が並んでいる。
それらは全て、今日のパーティの参加者が作ったものだ。
智輝「そうだな。冷めないうちに食べるか」
乙女「そうだな」
銭型の気合に満ちた声は気にしないことにしよう。
愛「ならば、初めはミソポタージュからだっ!」
露伴が持ってきたのは、味噌がこんもりと詰まれたミルクスープ。
明らかに溶け合っていないのが見える。
智輝「イヤ過ぎるっ!」
愛「なによぉ~おいしいかも知れないでしょう? ほらほら」
智輝「『かも』ってなんだーーっ!?」
大夏「じゃあ、このローストビーフで。私が精魂込めて……」
智輝「じゅうじゅう(銃々)焼いたとか言うなよ」
俺は前もって釘を刺す。
大夏「……....  」
こよみ「ああ、大夏さんが部屋の隅の暗闇に同化していきますっ!?」
智輝「まったく、お前らは。このスイートポテトみたいにおいしいものを作ろうって気はないのか? ああ、美味い」
桜(やった♪)
智輝「こういう料理なら毎日でも作ってもらいたいもんだけどな」
桜(──!?)
智輝「結婚して欲しいくらいだ」
桜「あわわっわわっ!?」
蘭「ふふふ、そうねぇ」
なぜか、桜の顔がホタルのお尻のように赤く光っていた。



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